足跡

まったりゆったりDairy?

2023.11.30 逆の世界 @渋谷REX

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 電車を降りると、あまりの寒さに体が震えた。いつの間にかニットとDOFパーカーでは耐えきれない時期になっていたらしい。雨の新潟がいくら寒くとも長袖Tシャツ+パーカーで乗り越えられていたというのに、いつの間にかこんなに冬に近づいていたのか。

 

 本日は渋谷REX。たくさんの人が溢れるホールで天井のミラーボールやら人々の頭やらを眺めていると、SEが大きくなって照明が消えた。

-yureru-のイントロと共にChantyの文字を背負った四人が登場。

セットリストは以下の通り。

 

1.-yureru-

2.群青

3.フライト

4.アイシー

5.ファントムミュージック

6.m.o.b.

7.春煩い

8.君のいない世界

9.Emaj7

10.冤罪ブルース

11.最低

12.piranha

 

今回のライブは、今まで見てきたChantyのライブとは少し異なって見えた。おそらく、芥さんが輪郭を持っていたことが一番の要因である。ほんの数回しかChantyのライブは見ていないが、芥さんは毎回音や感情そのもののように見えており、人間離れてしている浮遊した存在であるとどこかで思っていたのだろう。しかし、今回の芥さんは等身大の人間であったように感じる。理由は何となく思い当たるが、ここには記さないでおく。

 

 群青、フライトと加速していき、アイシーでフロアも本人たちもギアが1個上がったように見えた。アイシーは個人的に白や薄い水色のイメージがあったため、ピンク色の照明が基調だったのが意外であった。

 

 ここでMC。タイトルを決めた経緯やタイトルの意味を語り、どういう流れであったかは忘れてしまったが芥さんが「DOFが解散したくないって思うようにしよう」「婚姻届みたいに契約したわけじゃないでしょう?」と話しているのを聞いて、思わず泣いてしまった。芥さんの強い気持ちがこちらに伝わってきたからかもしれない。ファンとは違う悔しさや悲しさ、寂しさが彼らにはあるのだろう。形は違えど皆DOFが大好きなのだ。

 活動終了の知らせを聞いたときも今も、引きとめようという気は不思議と起きず、悲しみにいくら暮れても彼らの決めたことを尊重しようと思っている。それでも、芥さんの気持ちは痛いほどわかるし、もし万が一、億が一でも撤回するなんてことが起きたら私は怒ることなく泣いて喜ぶのだろう。

 

 ファントムミュージックでHiromuさんが参戦してテンションが上がったところで、芥さんの「来年の春にはこんな気持ちになっているのだろう」という語りで春煩いだと察し、始まる前から一人静かに泣いていた。「君といる季節を閉じ込めたいんだって」本当にその通りである。今この瞬間をパッケージングして、出られないようにできたらどれだけいいか。どの歌詞も自分に重なり、ああ、ここは芥さんの気持ちなんだろうな、なんて感じながら聴いていると、演奏が止まった。暗い空間の中で芥さんが、マイクを通さずに「お別れじゃないって言ってんだろ この手を離さないで」と丁寧に歌い上げる。この歌詞にこんな想いが乗る日が来るとは。「そして誰もいなくなった」の声が消えていったあとに君のいない世界のイントロでまた涙が止まらなくなり、これ以上泣くのはステージの上にいる彼らに失礼だ、と顔をあげたらちょうど芥さんが何かを吞み込むように静かに俯いているところであった。

 

 その後冤罪ブルース、最低、piranhaと会場は少し明るくなりDOFにバトンタッチ。うまい具合に感情サンドイッチセトリにしてくれたため助かったが、それでも心も顔もよぼよぼの状態であった。

 

 お次はDOF。セットリストは以下の通り。

 

1.My World

2.有為転変は世の習い

3.insomnia

4.真実の黒

5.アンインテリジブル

6.ねえ

7.理想と現実

8.psychedelic modulation

9.結果論

10.Seven Stars

11.Röntgen

12.it is what it is.

13.人類

14.peace

 

 My Worldで爽やかに始まり、コンピレーションにも収録されている有為転変に移る。Hiromuさんの合いの手に笑顔にしてもらいつつ、相変わらず美しいVJを眺める。曲中にyuyaさんが「俺は昔じゃねぇ今を生きてる!」「そして未来を作っていこう(うろ覚え)」と言っていたのが印象的だった。最後yuyaさんとruiさんが向かい合いながら弾き、ruiさんがyuyaさんの方を指さしのそのままinsomniaのイントロへ。

 

 真実の黒でシステムエラーにより映像が止まってしまい、急遽MCになった。タイトルのyuyaさんなりの意味、アップルマークは憎いやつだという話(起動すると12時間くらい画面にいることがあるという意味で)(話の途中後ろのモニターにアップルマークが映るミラクルも)、yuyaさんのパソコン(MAC)の起動音の話をしている間にパソコンが復帰しアンインテリジブルに。

 

 「ねえ」では横のモニターに縦書きの文字が横向きで写っているのを見て、去年の赤羽ReNY alpha公演を思い出した。VJ付きの公演に行ったのは赤羽が初めてであり、歌詞がまるで詩のようにスクリーンに映るのを見て感動した覚えがある。今回はruiさんもいる状態で見ることができてよかった。

 

 そして理想と現実。個人的にメロディは好きでよく口ずさんでいる曲なのだが、一部の歌詞がピンときていないこともあってどうしても好き具合が伸びきっていなかった。あまりライブで聴けていないというのもあるかもしれない。しかし、今回映像と歌詞と音を感じながら、ここに辿り着いてよかったと思った。どうしてこの思考に行きついたのか定かでないが、とにかくこの曲ができてよかったと思った。

 

 psychedelic modulationで芥さんと野中さんが参加したあと、結果論、Seven Starsと会場の熱は上がっていく。そして突然、peaceですっと温度が下がった。それは会場の熱量が消えてしまったのではなく、peaceという曲が熱を吸い上げて爆発したように見えた。その証拠に、今回のpeaceは映像も相まってすごく爽やかで、風が吹くようだった。yuyaさんが最後に放った「これからも好きなバンドを追いかけて」「Chantyがヴィジュアル系のテッペンとれるよう願ってる」というメッセージたちに色々想いを巡らせつつ、アンコールはなしでこの日のライブは幕を閉じた。

 

 進むものと止まるもの、まさに逆の世界。そのコントラストにえも言えぬ感情を抱きながら、仕方なしに明日のことを考えるのだった。